顎関節症

1.かわいそうな顎関節

アゴは人体のなかで、もっともよく使われている関節です。
人はアゴを1日に2000回以上も、開閉させ動かしているといわれています。
(噛む・しゃべる・動作の動き始め・荷物を持つとき・物を移動させるとき・食べものを飲み込むとき・あくび・睡眠中・いびき・他、運動時全般において)

またじつは、日常生活で一番強い力がかかっているのも顎関節です。
一度の食いしばり行為で、約50kgもの負荷がアゴにはかかるといわれています。

常に動いていたり、時には圧縮する強い力もかかる忙しい関節ですが、そもそもアゴは非常に繊細で、壊れやすい構造をしていますから、何らかの障害を生じることもなく、80才まで過ごせること事態が、まるで奇跡のようなものなのです。

じっさいに歯科医師会などの統計では、顎関節症の人がこの十数年で15〜20倍にも増加しているといわれており、現在の潜在患者数はなんと!日本人の2人に1人とされています。また顎関節症の人は、必ずといっていいほどアゴが左右どちらかにズレています。

2.訴えの多いパターン

  • ・口を開けていくと、左右どちらかに「ガクン」とズレる。
  • ・口を開けたり閉じたりするときに「パキン」「コキッ」と音が鳴る。
  • ・ものを噛むとアゴが痛い。
  • ・口を開くときにアゴが痛い。
  • ・途中でアゴが引っかかって口が開かない。

3.自分で確認できる現象

  • ・鏡の前で口を開けると、斜めに開く。
  • ・鏡の前で口を開けると、アゴが左右に揺れる。
  • ・耳の下やアゴの付け根を押すと痛い。
  • ・耳穴の前に指を当てて口を開くと、骨の動きが左右で異なる。
  • ・片方でばかり噛んでしまう。
  • ・アゴの先端が真ん中にない、どちらかに向いている。
  • ・片方の内ほお肉ばかりを噛んでしまう。

4.顎関節症の根本原因とは?

(1)片噛み

片噛みが顎関節症にまで発展してしまう理由は、いたって単純な話です。片噛みをしていると噛んでいる側の筋肉(咬筋・側頭筋など)ばかりが発達し、それにともない強く収縮してしまうため、いつも噛んでいる側のほうへアゴがズレていきます。
片側にズレが生じるということは、必然的に反対側のアゴもズレてしまいます。

歯医者さんは、左右奥歯のすり減り方や、内ほお肉の噛み込み跡など、口内からの情報で判断しますが、片噛みは顔からでも判断できます。まず1つめの判断基準は、片噛み側のエラのほうがぷっくりと膨らんでいること。
そしてもう1つは、片噛み側のほうの口角が上がって見えることです。

他にも判断基準として、片噛み側のほうれい線が深い、または長い。
片噛み側と反対側の下まぶたや、ほお肉がたるんで見える、などがあります。
口内や歯の形状を見なくても、その人が普段どちら側の歯で噛んでいるか?の判断は、見た目からでも容易に分かります。

また片方でばかり噛んでいては、噛んでいる側の顎関節ばかりに負担がかかってしまうので、いずれ噛んでいる側の関節円板という軟骨に、変形や損傷が発生します。関節円板が変形したり、前にズレたままになっていると、口を開くと「パキン」と大きな音がしたり、ムリをして開くと「ガクン」とアゴがズレるようになります。またそれがさらに進行すると、口が開かない、開こうとすると激しく痛い!といった症状=顎関節症にまで発展したり、顔の歪みがさらに進行して、顔面が左右非対称になってしまう可能性もあります。

(2)食いしばり

「食いしばるって何ですか?」と聞かれることも多いですが、食いしばるとは、日常的にアゴを噛みしめていないかどうか?ということです。 しかしこれは本当にやっている人が多いです。本人に自分が食いしばっているという自覚がないので、なかなか発見できない人も多いですが、これが慢性的な頭痛や肩こり、倦怠感や耳鳴りといった、あらゆる不明な症状の根源にもなっています。

構造的には、食いしばるとまずアゴの筋肉の他に、側頭部の筋肉が収縮します。そうすると、それに連鎖して頭頂部から後頭部へ、後頭部から首へ、首から→肩→背中へと、アゴから連鎖して身体の後ろ側全体の筋肉までもが収縮してきます。
とくに側頭部の筋肉は、慢性的に収縮したり、引っ張られている状態が長く続くと、側頭骨を中心に顔面・頭蓋骨のありとあらゆる部分(骨と骨のつなぎ目)に若干のズレが発生し、顔面と頭蓋骨が前後にも左右にも歪んでしまうことがあります。

また、日常で無意識に食いしばっていると、自律神経にも不具合が生じてきます。その理由は、じつは噛み合わせが完璧な人は少ないからです。噛み合わせが悪い状態、つまり歯の高さや低さに問題がある状態で、食いしばりや噛みしめ行為を頻繁に行っていると、交感神経が過剰に刺激されてしまいます。知らず知らずに行っている「食いしばり行為」が、顎関節症や頭痛の悪化のみならず、自律神経の乱れや精神的不調を悪化させる原因にもなっているのです。

(3)食べ物からの影響

「やわらかいものばかり食べていても大丈夫ですか?」という質問をよく受けます。普段からやわらかいものばかり食べていて、アゴの筋力が著しく低下している場合に限っては、その筋力のなさから顎関節が障害されやすかったり、アゴがすぐ疲れてしまうことがあります。 なぜならアゴ周囲の筋肉は、顎関節を守る「天然のコルセット」だからです。

しかしじつは、ここ十数年の傾向では、状況が逆転してきているのが現状です。頻繁な「食いしばり」や「歯ぎしり」などによる影響で、これだけ硬いものを食べなくても済む時代にも関わらず、逆にアゴの筋力が発達しすぎている人が急増しています。そして近年それに比例するように、顎関節症の人やアゴに異常を訴える人が増えています。

(4)趣味や習い事、部活などによる影響

バイオリン、クラリネット、サックス、スキューバダイビング、頻繁なカラオケや合唱練習、重量挙げ、砲丸・ハンマー投げ、格闘技、弓道、ラグビー、アメフトなど、総じて首を長時間傾けたままであったり、アゴに強い力のかかる楽器やスポーツなどが、顎関節にはあまり良くないものになります。

5.ガムを噛むことは良い?悪い?

顎関節症を予防するのに、「ガムを噛むことは良いことですか?悪いことですか?」と聞かれることもあります。
この場合は、アゴに痛みや炎症が出ていない時期であれば、ガムはかえって良いことだと指導しています。

単純にこのように考えてください。たとえば食いしばりや噛みしめ行為は、14キロのダンベルを腕を曲げてジーッと、ただ持って支えている状態です。これでは腕の筋肉も付きませんし、ただ疲労して老廃物が溜まり、凝った筋肉の痛みが激しくなるだけです。何の運動にも何かの解消にもなりません。

しかしガムの場合は、運動性があるので凝りません。逆にアゴと側頭部の筋肉をやわらかくします。上下上下とリズミカルに関節を動かす行為は、筋肉のコリを緩和させます。 持続系の筋トレ(この場合は食いしばりや噛みしめ行為)は、かえって筋肉を硬くしてしまいますが、軽めのおもりを持って回数をたくさん動かす系の筋トレ(この場合はガム)は、逆に筋肉のコリを取ります。 たとえばジムへ通い出すと、途端に20年も治らなかった「肩こり」や「頭痛」が治ってしまうケースも数多く確認されますが、それもガム噛みと同様のメカニズムです。ただ食いしばるだけの行為と、運動性のあるガムとを比較した場合、アゴと側頭部の筋肉に対する影響力には明らかな違いがあります。
ガムを噛むことは、顎関節症の改善や頭痛の発生予防には効果があります。

6.顎関節症について、極論。

アゴの痛みを誘発するもう1つの要因には、メンタルの不調や潜在的ストレスの存在があります。その時期の精神状態や抱えている問題などにより、無意識に食いしばっている時間が長くなってしまうと、アゴの神経が過敏になってしまうことがあるのです。「最近なぜかアゴが気になる」「アゴに違和感を感じる」「アゴが痛い」と感じる時期には、何かしらの不安やストレスになっている事柄がないかどうか?疑ってみることが大切です。

小さなことでもクヨクヨ悩む、過ぎたことをいつまでも気にするなど、些細なことにストレスを溜め込みやすい人は、自身が普段から何にでも思いつめていたり、無意識に食いしばっていることにも気がつきやすいので、アゴの痛みは「自分の不安」からきていることも理解できます。しかしストレスにあまり自覚のない人は、自分が食いしばっていることや、潜在する不安や恐怖の存在にも、なかなか気がつきません。なので自分では「ストレスや不安は一切ない」と思っている人が、アゴに痛みや違和感を感じている場合には、意識の奥にいる臆病な自分が、普段は見て見ぬふりをしている怒りや、将来への漠然とした不安などに対して、不満を持ち始めている可能性があります。「病院へ行っても、どこにも異常はないと言われた」「画像からは、問題が見当たらないと言われた」と訴える人も多いですが、たとえ物理的(構造的)な異状がアゴにはなくても、本人に「潜在的ストレス」の存在を知らせるために、内側からの”何かの訴え”や”メッセージ”として、幻の痛みを出現させていると考えてみてください。

しかしなぜ?アゴがその訴えの標的にされるのでしょうか?
それは人間生きていれば、食べ物だけは必ず食べることを脳は分かっているからです。食事のとき常にアゴが痛かったり、違和感や不具合を感じていれば、外側(構造)か内側(精神)のどちらかに、何らかの異変が起きているのでは?と早く気がついてくれることに期待して、知覚神経の感度を過敏に設定します。その本人に何か「変えてほしいこと」や「もう止めてほしいこと」があった場合、意識の奥にある見えない自分が「何かに気づかせよう」「何かを変えさせよう」として、全身のあらゆる箇所に原因不明の痛みや不具合を出してきます。それはアゴだけに限らず、五十肩でも腰痛にでもいえることで、あらゆる検査をしても身体にはまったく異状がなく、ただ症状だけが激しく出るという例が、じっさいの現場では一番多いパターンなのです。

7.顎関節症の人が注意すべきこと

ムチ打ち症や頚椎ヘルニア、手のシビレなどで病院へ行った際に、通常よく首の牽引を行います。 牽引はアゴにベルトをかけ、持続的に圧をかけますから、アゴの状態がさらに悪化する場合もあります。顎関節が歪んでいてアゴの位置関係が悪くなっている場合、くりかえし圧迫されることによって、顎関節にある軟骨が潰されたり変形を起こしてしまうからです。なので過去に一度でもアゴが痛くなった経験のある人は、牽引によってアゴの痛みをぶり返してしまう可能性がありますので注意が必要です。

自律神経の不調

1.自律神経を敵にする?それとも味方にする?

自律神経のバランスが乱れると、気にしなくてもいい些細なことや、本来は心配にならないことにでも、不安を感じるようになります。ということは逆に?自律神経が整ってくれば、あれほど不安に思っていたことでも、「じつはそんなに大したことではなかった」「なぜあんなに怯えていたんだろう?」と思えるようにもなります。

自律神経の不具合による不安定症が、まるで頭痛・腰痛・肩こりなどと同じくらい、ごくごく一般的なものになったのは、じつはここ30年ほどでの出来事です。

あらゆる不調のオンパレードで病院に行き、どれだけ精密な検査を受けても、体の構造には「異常ありません」と言われる人が増えています。なぜなら自律神経は、物理的な異常が画像には出ないからです。なので病院では具体的な対処法や解消法は一切与えられず、似たような薬を処方されるだけのくり返しになります。

そのような現状で途方に暮れている西洋医学難民たちは、藁をもすがる思いで「何かの解決策」を探しています。またその人口は、老若男女問わず、なぜかここ5〜6年で激増しています。

先進国に住んでいる我々は、常に初めての体験をさせられます。
冷房、24時間営業、地球温暖化、異常な便利、過度の運動不足、過労による不規則、放射性物質、防腐剤などの食品添加物、偏食による肥満など・・

これらは50年前にはすべてなかったものです。
我々がいま人間として、実験台として、モルモットとして、人類の歴史上初めて経験している環境なのです。

残念ながら現代社会は、自律神経が乱れる「要素」で溢れています。
しかしよほどの選択をしない限り、誰もが今いる環境を変えることはできません。
ならば我々自身を変えることでしか、対処・対応を工夫することでしか、自律神経を安定させ穏やかに暮らす方法はないのです。

2.ストレスだけが不安の原因ではない

そもそもなぜ人は不安を感じてしまうのでしょうか?またなぜ必要以上に、まだ起きるかどうかも分からないことまでを、いつも心配しているのでしょうか?おおざっぱに捉えれば、その答えは思いのほか、いたってシンプルです。

つい不安になってしまうのは、出るべきものが出ていなかったり、逆に出すぎているからです。

誰かとのトラブルや揉めごとが発生し、面倒なことにでも巻き込まれているのであれば、気が滅入ったり憂鬱になるのは当然といえば当然ですが、数年も前から日常的に続いている心配や不安の原因は、どうやらそれだけでもないようです。

何らかの理由により、脳から分泌されるホルモンや神経伝達物質が、本来出るべき量よりも多く出ていたり、あまり出ていなかったりすると、精神が不安定になりやすく、起きている問題や些細な出来事を、より深刻なものとして捉えてしまいます。また脳内物質の分泌バランスが崩れると、自律神経もその影響をモロに受けるため、めまいや息苦しさ、耳鳴りや発汗などといった「体の異常」も感じやすくなります。

自律神経と脳内物質は運命共同体であり、どちらかがバランスを失うと、もう一方のバランスも崩れてしまうという、共倒れの関係にあります。 つまり何も問題が起きていない人、これといって大きな悩みがない人でも、環境や生活習慣の変化によって自律神経が乱れてくると、脳内物質の分泌バランスにも乱れが発生し、意味もなく不安になって落ち込んだり、まったくやる気が起きなくなったりします。

脳内物質をダイレクトにコントロールする方法は、今のところ「投薬」以外に目新しい手段はないようですが、自律神経を整える方法は、これまでにもたくさん提案されています。どちらか一方を整えることができれば、もう片方もバランスを取り戻しますので、当施設ではまず自律神経からバランスを整えていくことで、脳内物質分泌の安定を試みます。

脳内物質は100種類以上もあるといわれていますが、そのなかでもドーパミン、アドレナリン、セロトニンなどの脳内物質が分泌のバランスを取り戻せば、いままで常に感じていた漠然とした不安や、言い知れぬ恐怖や葛藤もなくなります。また自律神経を回復させることによって、どうきや不眠、集中力の低下や倦怠感などの不快な症状が緩和されれば、そもそもの原因でもあった「問題そのもの」もあまり気にならなくなります。

そのときに、「なぜあんなことで悩んでいたんだろう?」「最初からそう考えればよかった!」などと、そこではじめて気がつくことも多いのです。 すこやかに暮らす心得として、まず「体の問題」がこころの不調を招いていること。そして「こころの問題」が体の不調を治りにくくすることを理解しましょう。

3.便利でもあり厄介でもある全自動式神経

自律神経はオートマチックに働く、自分の意志や気合いなどでは調節できない神経です。心臓、呼吸、内臓、排便、尿、汗、体温、血圧などを常に調節している、とても優れた、しかし時に厄介な機能です。

人前で恥ずかしい思いをしたとき、「赤くなるな!」と思っても顔は勝手に赤くなりますし、プレゼンや自己紹介などで「落ち着け!」といくら自分を律しても、緊張や興奮によって心臓はバクバクしますし、自分の意志や気合いでは手の震えも止められないものです。

自律神経には、交感神経と副交感神経の2つの働きがあり、俗にいう「自律神経が乱れる」という状態は、交感神経が働きすぎているか、副交感神経が働きにくくなっているか、のどちらかです。

交感神経が働きすぎていると、常に焦りや緊張を感じてしまうため、肩が凝ったり頻繁に頭痛が起きたりします。他にも、胸が圧迫されるように苦しくなったり、のどが締め付けられる、口が渇く、胃が痛い、寝つきが悪いなど、心身があまり休めない状態が続きます。

また副交感神経が働きにくくなっていると、やたらと目が乾いたり、つねに便秘であったり、イライラしたり生理痛に悩まされたりします。また冷え性や足のむくみ、低体温による「冷え体質」が改善されない例も数多く見られます。

交感神経が優位になるのは、社会、公共の場、会社、学校、緊張を感じる上司、苦手な友達、競争、不安、周囲の期待、家族以外との対人関係にいるときなどです。

※「公共の場」とありますが、家の中でも常に焦燥感に駆られて、先のことを心配ばかりしていると、安全な自宅にいるにも関わらず、交感神経が緊張を起こします。また「家族以外」とありますが、同居人とのトラブルや家庭不和がある場合には、家にいても交感神経が緊張しています。この場合でも「自宅焦燥」と同様に、ほぼ一日にわたって交感神経が刺激されますので、その環境に長くいることによって精神に異常をきたしたり、内臓の病気へと発展してしまうことがあります。

4.ストレスがなくても自律神経は乱れる

とくに精神的ストレスがなくても自律神経は乱れます。たとえば、

・必要以上に体が冷やされる、人工的冷えによるもの。
・24時間営業が増え、半ば強制的に浴びている?照明などによる視界からの刺激によるもの。
・地球温暖化による異常な暑さと、急激な気圧の変化による自律神経の混乱によるもの。
・必要以上に便利になり過ぎたことによる、慢性的な運動不足と筋力低下によるもの。
・過労による不規則によって、交感神経の緊張が異常に続くことによるもの。
・妊娠〜出産によるホルモンの変調や体質の変化によるもの。
・化学的物質などによって、ホルモンや免疫が受ける影響によるもの。

また、偏った食生活による肥満のせいで、ふくらはぎの血流が低下していたり、普段の呼吸が浅いせいで、横隔膜の筋力が低下しているなど、体の機能・構造によって乱れることも多くあります。他にも加齢による不眠や、女性ホルモン(エストロゲンなど)のバランスが崩れる更年期など、年齢による自然現象や変化によっても、自律神経は正常なコントロールを失います。

このように自律神経は、精神や脳内物質からだけではなく、外からのさまざまな影響によっても乱されています。なので自覚としてストレスや争いごとのない状態でも、まるで病気にでもかかったかのような症状や、理由の分からない不安に悩まされる人が大勢います。

先にもあったように、些細なことでも不安になりやすかったり、体に異変や不調を感じる時期には、多くの場合自律神経がバランスを崩しています。もちろん病院に行っても異常は確認されず、「原因は不明」もしくは「ストレスからでしょう」さらには「気にしすぎじゃないですか?」とまで言われてしまうこともあります。

ふとした瞬間から「ストン」と気持ちが沈んでしまったり、ちょっとのことにでもイライラしてしまう理由が、すべてストレスによるものとは限りませんし、必ずしもストレスだけが、自律神経を乱している原因ではなかったのです。

また自律神経は、0コンマレベルでの気温差や、気圧、湿度など、外界のさまざまな状況をも敏感に察知し、24時間休むことなく対応しているため、ちょっとした環境の変化や悪化にも、少なからずの影響を受けてしまうのです。

5.自律神経は手足末端がキモ

すべての血管は自律神経によって支配されています。たとえばそこが後頭部であっても、肺であっても、肛門であっても、脳であっても、基本的にはそれぞれの場所に適切な量の血液を送っています。なぜなら人間の血液量は一定に限られているため(体重の約13分の1、体重60kgの人で約4.5リットル=一升瓶約2本半)、それぞれの状況を的確に把握し、全身の血管を拡げたり縮めたりして、各所の血流を調整する必要があるからです。

たとえば外気が寒い冬などに、手足の末端が冷えるのは当然のことです。その理由は失っても生命に影響のない手足よりも、脳や命に関わる内臓のほうへ優先的に血液を集めるからです。

また外気の暑い夏は、外へ熱を逃がすために、末端の血管は開くように設定されています。しかし急に冷房の効いた空間に入ると、脳は暑いと寒いのどちらを優先させて設定すべきか?迷ってしまうため、自律神経には混乱が生じます。

とくに女性の場合、冷房などで外から人工的に冷やされると、手足末端の血管が収縮しやすく、冷え性やむくみなどにも悩まされます。また女性は男性に比べて、腕や足の筋力が少ないため、筋肉内で熱を産生する力が弱く、構造的にも男性より「冷え」に弱いのは当然のことです。

「暖房でも自律神経は乱れるの?」

寒い屋外から暖房の効いた屋内へ入っても、自律神経はあまり乱れません。 その理由は、人間は20万年以上も前から「火」を使って暮らしてきているので、DNA(過去の記憶)からすれば、暖められることには慣れています。

しかし冷房の歴史は、とくに日本で一般的に普及してからは、まだたったの30〜40年しか経っていません。人工的に「冷やされる」ことに対して、自律神経がまだ上手く適応できないのは、当然といえば当然です。

6.外側から内側への逆行アプローチ

神経の働きは、内側から外側(脳〜末端)だけの一方通行ではありません。外側(手足や体表面)からの情報も、背骨を介して内側(視床)へと送られます。自律神経はその外側から送られてきた情報を元に、それぞれの働き加減を決定し、それぞれの場所に適切な指令を出します。

しかし常に交感神経が働いているタイプの人は、どんなに副交感神経が優位になっても、たとえば温泉に入っても、岩盤浴で温めても、リラクゼーションなどでうっとり癒されていても、手足の血管が開きません。交感神経に支配されている時間が、日常であまりにも長すぎるため、末端の血管に完全な「閉じ癖」がついているからです。

このように外側にそもそもの原因があった場合、たとえ内側から「現在は副交感神経が優位です!末端の血管を開きましょう!」と正しく指令が出ていても、血管自体がその命令を遂行することができません。なので何らかの方法によって、末端の血管がきちんと開けるようになれば、内側と外側とのやりとりもスムーズになり、副交感神経の働きも正しく機能するようになります。爪もみや寒風摩擦、足湯や腹式呼吸をすることも同様のメカニズムを利用したもので、副交感神経のスイッチを入りやすくさせるために、末端から血流の改善を試みるという、外側から内側への逆行アプローチです。

7.まさかのハッピーストレス!?

環境や気候などによる影響、体の冷え、肥満、運動不足、街の明り、過労、不規則、不眠、ホルモンの異常、出産による体質の変化、手足末端の血管が閉じていることや、ふくらはぎの血流低下、さらには横隔膜の筋力低下など、自律神経にはたくさんの「黒幕」がいることを理解していただきました。しかし冒頭にもありましたが、自律神経が乱れる一番の要因は、やはり精神的ストレスによるものです。

属するグループや会社での人間関係によるストレス、解決できない家庭の問題、将来への過剰な心配、急ぎ、焦り、締め切り、プレッシャーなど、精神面が強く揺さぶられる出来事=交感神経が強く刺激される状況によって、自律神経はもっとも大きくバランスを崩します。

しかし一般的にはストレスといえば、自分にとってイヤなこと、苦しいこと、逃れたいことなど、精神的な苦痛をまず思い浮かべますが、必ずしもそれだけがストレスの原因とは限りません。自分ではハッピーだと捉えているもの、たとえば初期の恋愛やデートでの緊張、まだ互いに気を使いあっている新婚、出産、育児、夢のマイホーム購入や新居への引っ越し、旅行、映画やスポーツ観戦などでの興奮でも、交感神経は強く刺激されます。

たとえば旅行から帰ってくると、だるさが1週間くらい続いてしまうのも、交感神経過緊張からの反動です。また他にもパーティー出席や宴会など、団体のなかに身を置いているときなど、会合や人の集まりが多い時期にも、交感神経が刺激され自律神経は緊張しています。

趣味や取り組んでいるものでの高揚や、好きな仕事に没頭しているときなど、適度に交感神経が刺激されている状態は、活発・活動系のエネルギーに満ちあふれた「良い交感神経」ですから、自律神経はむしろバランスが取れている元気な状態です。しかしそれも行き過ぎてしまうと、限度を超えてしまうと、交感神経が過剰に働いてしまい、たとえ好きなことをしていても、脳や身体はそれをストレスと判断してしまいます。だからその反動でこんどは、旅行から帰ってきたときのように副交感神経が過剰になってしまい、だるさや疲労感から抜けられないのです。

つまり精神的にキツいことや、ツラいことだけがストレスの原因とは限らず、それが自分にとってハッピーだと思っていることでも、交感神経が働きすぎていれば自律神経はバランスを失います。「いまの自分にはストレスなどないのに!」「かねてから望んでいたものをやっと手に入れたのに!」と思っていても、なぜか原因不明の不調が続いていたり、漠然とした不安を感じる場合には、たとえ本来は嬉しくて幸せな境遇であっても、自律神経はひそかにバランスを失っているかもしれません。

8.「涙活」で自律神経は安定する

少し前までは、「笑う」ことで免疫が活性し、発ガンや重篤な病が防げるということから、「笑活」のほうに人々の注目が集まっていましたが、最近では「涙活」という言葉を耳にすることも多くなりました。笑活はおもに病気などが増えてくる年齢の高齢者に、涙活は比較的若い世代に支持層があるようです。しかし笑活でも涙活でも、どちらも自律神経にアプローチをしているという点では、同じような作用に期待しているといってもよいでしょう。

だいぶ以前から当施設でも、「泣く」ことの良さをたくさんのクライアントに勧めてきましたが、そのときに「泣けることがなかったらどうしたらいいですか?」とか、「泣きたくないのに泣くんですか?」といった質問をよく受けました。 この場合は、必ずしも自然に泣かなければいけないということではないのです。 また、大泣きしなければダメといったことでもありませんし、ほんの少し涙ぐむだけでも、効果は十分に期待できるのです。

たとえば悲しい映画やドラマをあえて見る、はたまたユーチューブで「鉄拳」を見るなど、あえて泣く、泣こうとして泣くのも可なのです。 自律神経に外側からアプローチをするといった意味では、ほんの少し泣けただけでも副交感神経が立ち上がってきて、数時間後にはなぜだかスッキリとしてきます。 これはツライ失恋をして、その日の夜に泣き尽くすと、なぜか翌日はスッキリするのと同じ作用です。

「涙活=自律神経安定」の根拠をシンプルに捉えると、人間にもともと備わっている自律神経のメカニズムが、泣く=副交感神経だということです。つまり最初からそのようにプログラムされているということに尽きます。先にもありましたが、副交感神経が優位に働くと休息、安心、リラックスモードに切り替わるので、心も身体もラクに感じることができるのです。

仮に人間のメカニズムが、泣く=交感神経だったとすると、泣けば泣くほど不安が増し、恐怖に苛まれ、闘争・競争・怒り・焦り・プレッシャーがさらに増大し、ますます苦しくなります。

なのでそうならないように、最初から設定されているのかもしれません。 失恋しただけで死にたくなどならないように、精神の構造がハイテクに組み込まれている。ヒトの身体や精神構造は、知れば知るほど上手くできています。

ここで少し余談ですが、自律神経のバランスをちょっと別のことでも解釈してみませんか?たとえば楽しくお酒を飲んでいて、ほどよく酔っている状態であれば、一番カワイイ自分をアピールできたのに、つい飲み過ぎて「くどく」なっていたり、本性を明かしてしまってボロが出たり、翌日に何度も後悔するほどの失言をしたりと、作用がどちらか一方に偏り過ぎることでバランスを失うのは、恋愛の成就も自律神経も同じことなのかもしれません。

9.交感神経だって素晴らしい!

休日などでつい寝すぎてしまったり、どこへ出掛けるでもなくダラダラと、1日中横になって過ごしてしまったりすることは、誰にでもよくあることです。しかしこのように1日の大半を寝てばかりで過ごしてしまうと、こんどは副交感神経が優位になり過ぎてしまい、どうしようもない倦怠感やだるさから、なかなか抜け出せなくなってしまいます。このような過ごし方も週に1回程度、1日だけであれば、そこまで自律神経にも影響を及ぼすことはありませんが、無職や休職期間中にこれを毎日、さらに何年も続けてしまっていると、いよいよ本格的に通常の生活を取り戻すことが困難になります。

自律神経は、副交感神経に支配され過ぎても良くありません。

なぜなら、副交感神経に支配され過ぎている状態というのが「ニート」だからです。外に出たくない、人と話したくない、コンビニの店員とすら接触を取るのが面倒など、普通の社会生活が営めないほどの非活動状態に陥ることがあります。ここまでの内容では、交感神経に支配され過ぎることで精神のバランスを崩し、うつ病などを発生させてしまうことを喚起してきました。しかしじつは、あまりの非活性や非活動状態によって、副交感神経に支配され過ぎてしまうことでも、メンタルや思考が内に内に向いていってしまい、消極性の悪循環からうつ病や精神疾患を引き起こしてしまうこともあるのです。また副交感神経に支配され過ぎていると、アレルギーやじんましんなどが出やすくなったり、下痢ばかりが続いてしまうなど、体の働きが正常に機能しなくなることもあります。

本サイトも含め、自律神経に関わることが書いてある本のほとんどでは、さも交感神経だけが悪者で、副交感神経だけが大切なことのように誤解されがちですが、活発に活動したいときには「交感神経優位」の状態が不可欠です。交感神経は悪くいえば闘争、怒り、不安などの恐怖やストレスに苛まれた状態ですが、いい意味では仕事をバリバリこなしている状態で、出世、やる気、達成、歓喜、大きな感動なども交感神経の為せる技です。つまり過剰でさえなければ、交感神経優位な状態は最高なのです。

なので休日などで一日何もしていない、ダルい、何もしたくない、ひたすら眠いといった状態であれば、呼吸を少し荒くしてみるのもひとつの手です。 これによって交感神経が優位になり、副交感神経に支配され過ぎていた自律神経のバランスが整います。

ニートのような状態で数年間過ごしていて、もういい加減そのような生き方には不安を感じ、ダラダラと過ごしている日々にもウンザリしている状況であれば、家の中から出ない、部屋に籠ってしまう生活では、どうしても先は見えてきません。やはり家にずっといてしまうと、外に出るきっかけや自信が見いだせなくなり、ますます具合が悪くなってしまうのです。なのでその状態から1歩でも抜け出したいのであれば、外で何かできることをなるべく早く見つけるべきです。最初は釣りでも写真でも何でもいいので、外に出る必要があるものを始めてみます。そして次の段階では、できれば少しでも身体を動かす必要のあることで、何か外に出られるものが見つけられれば、体も自律神経も少しずつ活性化していきます。たとえば深夜のウォーキングでもかまいませんし、自転車でもマラソンでも、まずはひとりで始められることからスタートさせてください。その行動をある程度の期間でも継続できたのであれば、そこからは本人の予想を上回る結果が期待できるかもしれません。

ニートや定年後うつの最大の敵は、起きてからやることがないということ。やることがないから、起きられない。遅く起きるから眠れない。眠れないからまた遅くまで起きる。このスパイラルに浸かってしまうと、いざ社会復帰できるチャンスが訪れても、寝坊や遅刻をくり返してしまう危険性があります。なので、たとえ自分がいまニートであったとしても、なにか外に出る必要があるもの、なにか習慣として毎日外へ出れるものを、ゆくゆくは始めなければならないのです。

10.女性のほうが自律神経は弱い

女性のほうが自律神経は弱い、というよりも乱れやすいです。 生理があるからだとか、ホルモンの影響もあるとか、感受性が強いだとか、いろいろいわれていますが、原因はDNA(遺伝子の記憶)からのものです。 むかしむかし、我々の祖先がまだ股間に葉っぱを付けて暮らしていた頃?からの記憶によるものでしょう。

まず男の場合は始終外にいて狩りをし、自身の生命を脅かす動物や、敵対する別の種族などに遭遇する機会も多かったため、自律神経でいうところの「交感神経過緊張」状態には慣れていました。 しかし女性は外敵に接することも、危険な目に遭うことも、男に比べたら少なかったため、交感神経過緊張の状態にはあまり強くありません。
これを今の社会に置き換えれば、対人・対立・競争・争い・揉め事・急ぎ・苦手な上司・締め切り・怒りなどにより、体調や自律神経のバランスが崩れやすいのは女性のほうといえます。

11.協調性こそ女性の財産

しかし女性は女同士での会話や、全然好きでもない相手とでも、うわべだけでの付き合いができる協調性を持っています。 これもやはり古い記憶からのもので、男が外に出ている間、同じ種族の女同士が集まり、協力しあい子育てをしたり、皆で穀物を叩いたり踏んだりしていたからです。

家では「あの子、嫌いなの!」と言ってる割には、一緒に買い物に行ったり食事に行ったりしているのを見て、男は不思議に思っています。 この男にはない協調性こそ、女性の絶対的な財産になります。

12.「ときめく人」はあなたの自律神経を崩壊させる

一緒にいて「トキメク人」と結婚したら、あなたの体には、どんな変化や影響があるでしょうか?一緒にいて「ときめく人」は、あなたの自律神経の「交感神経」を刺激するタイプの人です。

相手に交感神経を刺激されると?
一緒にいてワクワク、ドキドキ、ちょっと恐い部分もあったり、時々不安にさせられたり、しょっちゅう心配しなきゃいけなかったり。 あなたはこの相手にスリリングな要素を感じ、常に興奮させられている状態です。 仮にそんな相手と結婚にまで至った場合、その後のあなたの体調や健康状態は、どのようになっていくでしょうか?

そのような相手と同じ屋根の下で長く暮らしていると、心筋梗塞、くも膜下出血、脳梗塞、ドライアイ、虫歯増加、不整脈、胃潰瘍、便秘、冷え性、生理不順、子宮内膜症、不妊、多汗症、めまい、耳鳴り、メニエール病、不眠、のぼせ、頭痛、肩こり、腰痛、発ガン、口内炎、顔の吹き出物、切れ痔、膀胱炎、各種感染症などなどなど・・

パッと頭に浮かぶだけでも、将来的にこれだけの病を発症する可能性が高まります。 つまり?一緒にいて「トキメク人」とは、結婚しないほうが病気にはなりにくいのです。いわゆる「結婚と恋愛は別」と呼ばれるものに、これも該当するのかもしれません。

13.あなたの自律神経を安定させる人とは?

では?あくまでも「健康維持」という概念で、病を発症する可能性が低い相手とは、あなたにとってどのようなタイプでしょうか?これを自律神経の影響から考えていくと、その判断基準は相手の「年収」や「肩書き」や「社会的地位」「外見」「境遇背景」「世間体」などで判断することはできません。選択すべき基準としては、一緒にいてシンプルに「落ち着く相手」「無理をしなくてもよい相手」「疲れない相手」「自分のままでいられる相手」「話や意見が噛み合う相手」「一緒にいてギクシャクしない相手」つまり?

フィーリングの良い相手=波長の合う相手を選択するべきです。

しかしここに、世間一般のアンケートなどでよく上位にある、「優しさ」とか「頼りになる」とか「経済感覚」「包容力」などは入っていないんですよ。 あくまでもシンプルに「フィーリング」の良い相手、ということになります。 優しくなくてもフィーリングが良い相手、頼りにならなくてもフィーリングの良い相手、経済感覚が不安でもフィーリングの良い相手、包容力がなくてもフィーリングの良い相手。これがいわゆる自律神経でいうところの、あなたの「副交感神経」を優位にできるタイプに該当します。

副交感神経が刺激されると?
落ち着く、リラックスしている、肩の力が抜けている、頑張らなくてもよい、一緒にいてラク、安心といったような、休息時に近い状態になります。そうすると体内では、リンパ球の活動が活発になり、前述したあらゆる病が発症しにくくなります。また免疫力が高まる状態ですので、もちろん発ガンもしにくくなります。

14.相手のバランスは「7対3」がよい

ただし副交感神経優位も度を過ぎると、つまりあまりに緊張感がなさすぎたり、もうどうでもよかったり、本当に「空気以下」のような存在になってしまうと?

一緒にいて「だるい」「無気力」「無関心」「無感情」「無表情」な状態になってしまう危険性も含まれているので、それもそれで少し問題があります。 「休息」や「お休み」モードも、あまりに度が過ぎてしまうと、もう相手に対して何もしたくなくなります。

また副交感神経優位が行き過ぎると、先にもあったようにそれはそれで各部位にも非活性化が生じ、正常な機能ですら働かなくなってしまう場合もありますので、あくまでも病気を未然に防ぐという意味で、一番ベストな相手としては、

・適度な緊張感(交感神経30%)
・おおむね全般(副交感神経70%)

くらいに該当する相手を見つけることができれば、将来的に「発病」や「早死」を招く危険性は低下します。
それでもって「年収・肩書き・社会的地位・外見・境遇背景・世間体・見栄・自慢」も満たされるお相手がいれば最高ですね!

いろいろ妥協できない条件もあるかもしれませんが、好きでもない相手と一緒にいるのは、精神的にかなりの苦痛を伴います。周囲にどう見られる?友達にはどう思われる?だけで決めてしまっても、やはり続かないケースが多いようですから、発病や精神疾患(うつ病・ノイローゼ・パニック障害・過食症・アルコール依存症など)に陥らない結婚を望むのであれば?「人にどう思われるか」よりも「自分たちがどう思うか」で決定することをおススメします。あくまでも自律神経のために、という考えです。いつまでも独身でいることが、どんなに許しがたいことだとしても、結果として離婚してしまったら、結局はしなかったことと同じですから、そんなに急ぐ必要はないのかもしれません。

それでも完全に割り切って考えられる人であれば、一緒にいて疲れようが、自分を偽らないと一緒にいられない相手だろうが、まったく話の噛み合ない相手だろうが、常に緊張を感じてしまう相手だろうが、生理的にも無理を感じる相手だろうが、すべての行動がキモチ悪く見える相手だろうが、何がなんでも目標達成!絶対にカネ持ちと結婚!というのも、また1つの選択ですので、どちらを目指すのかを決めるのも、この世はすべてあなた次第なのです。そういった意味では、仕事でも結婚でも誰もが自由に選択できる、日本はとても平等で平和な国だといえますよね。

頭痛

1.頭痛の黒幕とは?

頭痛の原因はいろいろ考えられますが、当施設ではアゴ(顎関節:がくかんせつ)のズレによっても引き起こされると考えています。なぜならアゴがズレてしまうと、頭蓋骨にもズレが生じてしまうからです。 これまでの統計を分析してみても、アゴの不調を訴える人の多くが、頭痛でも悩んでいます。また頭痛を訴える人の多くに、アゴの異状(ズレ)があります。不思議に思うかもしれませんが、なぜかアゴ(顎関節)の状態が良くなってくると、それに伴い頭痛の頻度も減少、あるいは消失する方が、想像以上に多いのです。

頭痛の原因の約9割は、頭蓋骨の外側に張り付いている筋肉にあります。そのなかでも特に、側頭筋という頭蓋骨の両サイドにある筋肉が、頭痛にもっとも関与している筋肉です。側頭部の筋は、咀嚼(ものを噛む)や会話(しゃべる)にも関係する筋肉なので、頭蓋骨の他の筋群と比較しても、格段に疲労が多く頭痛の出やすい筋肉なのです。

また側頭部の筋肉のみならずで、頭痛の原因になっているすべての筋は、頭蓋骨の外側に密着しています。すると頭蓋骨〜顔面骨が歪むことで、それらに付着している筋肉も慢性的に引っ張られたり(伸展)、圧縮されたり(収縮)しますから、アゴに痛みや違和感などまったく感じない人でも、頭全体に締め付けられるような頭痛が発生します。

2.頭痛の現状と真相

日本の頭痛難民は、推定で3900万人以上いるといわれています。まさに日本人の4人に1人は、何かしらの頭痛に悩まされているのが現状です。しかしその内の9割以上の人が行っている解消法は、「薬を飲むだけ」または「横になるだけ」というのが実情です。

頭痛の統計グラフを見てみると、約2200万人の人に起きているのは、筋緊張型の頭痛(頭蓋骨の外側にある筋肉の痛み)です。そして約840万人に起きているのが、片頭痛といわれています。しかし片頭痛の痛みも、頭蓋骨の中や脳から発生している痛みではなく、頭蓋骨の外側にある神経や血管から出ていることを考えれば、いわゆる「頭痛持ち」の9割以上が感じている頭痛は、頭蓋骨の外側へ何らかのアプローチをすることで、軽減または消失させることができると考えます。

そもそも頭蓋骨の中で起きる頭痛は、全体の0.1%にも及びません。片頭痛などで、あまりにも強い痛みが発生していると、「頭蓋骨の中で何か問題が発生しているのでは!?」とか、「脳に異常が起きたのでは!?」などと不安にもなりがちですが、頭蓋骨の中で起きる頭痛は、脳腫瘍やクモ膜下出血など、生命に関わる重篤なレベルのものだけであり、一般的に頭痛といわれるもののほとんどは、頭蓋骨の外側にある筋肉の中で起きています。

3.筋緊張型の頭痛とは?

筋肉が伸ばされたり縮んだりしていると、筋肉内の血流が悪くなりますので、あらゆる老廃物(乳酸やピルビン酸など)が排出されにくくなり、側頭部や後頭部などに、鈍い痛みや重苦しさが発生します。老廃物そのものによる痛み、老廃物から排出される物質により、神経が刺激されて感じる痛み、血流が悪くなることで筋肉内の酸素が不足し、筋の酸欠状態から発生する痛みなど、痛みの原因は同じ筋緊張型の頭痛でもさまざまです。

また筋緊張型の頭痛は、午後から夕方にかけて起きることが多く、持続的な重い痛みが数時間〜半日ほど続きます。痛みの度合いも片頭痛ほど激しいものではなく、吐き気や嘔吐には至る例の少ない、仕事中でも何とか耐えられるタイプの痛みが特徴です。

4.片頭痛とは?

血管が脈打つような激しい痛みは、いわゆる片頭痛(血管性の頭痛)といわれるものに該当しますが、じっさいには筋緊張型の頭痛でも多少は脈打ちます。また片側だけ痛むものを片頭痛と捉えがちですが、片側だけ痛む筋緊張型頭痛もあれば、両側が痛い片頭痛もあり、その分類と境界線はとてもあいまいです。

また、脈打つタイプの頭痛の多くは、片頭痛と筋緊張型頭痛の合併症である「混合型頭痛」といわれています。つまり始めに筋緊張型タイプの頭痛によって、血管が収縮し血流が悪くなったときに、それを回復させるために血管が急激に拡張され、激しく脈打つタイプの片頭痛に変わります。

片頭痛や混合型の頭痛では、下を向くとズキンズキン・ガンガンと、さらに強く痛みが増したり、あまりの痛さに吐き気や嘔吐を伴うこともよくあります。激しく脈を打つのは、心臓の拍動と供に血液が運ばれて来ると、そのつど血管が拡張されるため、その血管の周囲に付着している三叉神経も、それに伴い引き伸ばされてしまうからです。しかし例え血管が拡張されていなくても、何かの理由により三叉神経が過敏になっていると、血管の伸縮には関わらず、同じように脈打つような頭痛を感じます。

5.片頭痛と筋緊張型頭痛は真逆に作用する

側頭部や後頭部の筋収縮によって、血管収縮→反動で拡張=片頭痛(混合型)は先にもあったように、あくまでも筋緊張ありきで始まる頭痛です。しかし筋緊張を伴わない片頭痛は、朝からガンガンと激しく脈打っていたり、匂いや光や音、精神的ストレスなどをきっかけに突然発生したりと、筋緊張型の頭痛ではまず見られない始まり方をします。

ホッと安心した時や、緊張やストレスから解放された瞬間にも、血管が急激に拡張することが多く、片頭痛が起きやすくなります。また筋緊張を伴わない血管性の頭痛では、飲酒やお風呂など血流が良くなる行動を取ると、痛みはさらに激しさを増しますが、筋緊張型頭痛の場合では、逆に血流が良くなることで痛みは軽くなります。
他にもよく見られるのは、休日に出やすい、寝すぎると必ず起きる、寝不足や長時間の空腹、急な気温差、低気圧の接近時、遺伝性(家族も頭痛持ち)など、片頭痛の発生要因は人それぞれ、状況もさまざまであり、筋緊張型の頭痛とはまた違った理由や作用によって起こります。

6.いつも片側だけが痛い=片頭痛ではない

いつも片側だけが痛い、いつも同じ側ばかり痛くなるというケースも現場では多数見受けられます。しかし片側だけが痛くても激しく脈を打っていなかったり、頭痛発生から24時間〜数日も続いてしまうものでなければ、それは頭蓋骨の外側にある筋肉が、何らかの理由により緊張(伸ばされたり縮んだり)して起きている頭痛です。

たとえば後頭部の片側だけがいつも痛くなる場合では、首の傾きにより片側の後頭部が常に引っ張られていたり、圧縮され続けることによって、片方のいつも決まった場所に痛みが発生します。側頭部やこめかみの片側だけが痛い頭痛でも、根本的にはアゴがどちらかにズレることにより、片方の側頭筋が常に引っ張られていたり、収縮することによって起きている頭痛です。他にも首が傾いていることにより、頭部から肩まで片側半分の筋肉だけが、常に伸ばされたり押し潰されていることでも、片方だけに頭痛が出やすくなる原因になります。

肩こり・姿勢改善

1.肩こりの原因は手首にあった?

姿勢が良くなれば、肩や背中が凝らなくなることは、誰もが当たり前のように知っています。しかし手首の向きが、姿勢や肩こりに関係していることは、まだあまりよく知られていません。肩こりと手首?手首を使って姿勢矯正?ピンとこない人も多いかもしれませんが、その手首の向きをほんの少し変えるだけで、姿勢が自然に矯正されていき、なかなか治せなかった肩こりや背中の痛みを解消することができます。では手首の向きがどのようになっていると、姿勢や骨格が悪くなり、肩こりを引き起こしてしまうのでしょうか?

じつは手の甲が内側に向いている人のほとんどは、肩が凝っています。
逆に肩が凝っている人のほとんどは、手の甲が内側に向いています。

手の甲が内側に向いていると、それだけで肘にも内向きの回転がかかり、伴って肩にも内巻きの力が加わります。単純な話ですが、物理的に肩が内に巻けば巻くほど、肩甲骨の位置も伴って前に移動して行きますから、背中側が張ってくるのは当然のことなのです。

2.その姿勢で肩こりは治りましたか?

皆さんにとっての悪い姿勢とはいったい、どのようなイメージでしょうか?猫背?ストレートネック?左右のアンバランス?片方の肩が下がっている?その他にも腰が曲がっていたり、骨盤が歪んでいるなど、いろいろなカタチが目に浮かんできます。

また皆さんが知っている正しい姿勢とは、どんなものですか?背筋を伸ばす?胸を張る?首を起こす?気をつけの姿勢?これらは誰もが一度は意識してやってみたことのある、一般的に「正しい」といわれる姿勢です。姿勢を良くしよう、改善しようとして頑張ってはみたものの、その姿勢のままで何分いられましたか?ほんの30秒程度しか続かなかったのではないでしょうか?上から吊るされているイメージで立つ!なんて言われても、正直よく分かりませんよね?

ましてやその状態で1日何時間も、さらに何年も続けていくのは、やっぱりムリです。そんなに意識も続きませんし、姿勢のことだけを考えて1日過ごすわけにもいきません。まずここで現実として、意識して「頑張り続ける」正しい姿勢は、1日中〜毎日実行することはできないものと理解していただきます。

3.姿勢と肩こりはラクして治す

ネットショッピングが盛んな最近では、姿勢矯正ベルトなどを使用している人も見かけますが、効果は「メガネ」と似たようなものかもしれません。メガネは付けているときはよく見えますが、外したら見えなくなります。姿勢矯正ベルトも付けているときはいいですが、外したらいつもと同じ姿勢に戻ります。また常にベルトを付けて生活などもできませんし、服も自由に選べません。商品にもよると思いますが、じっさいには装着してから10分もすると肩や呼吸が苦しくなり、結局すぐに外したくなりますので、とても長時間付けていられるものでもありません。

そしてじつは、ムリに良い姿勢をキープしていても、こんどはそのために使っている筋肉が、不自然な緊張から疲れてきてしまうのです。なので姿勢改善も含め、肩や背中の筋疲労は静止している状態で治すよりも、動いている状態で治したほうが効果が出やすいのです。
では動いている状態で肩こりや姿勢を治すには、何をしたらいいですか?もちろん色々あると思いますよ。これまでにも効果の高い運動メソッドは、たくさん提案されています。でも誰もがカンタンにできて、ラクに続けていけるものにしなければ、やはり続きません。継続するのに困難がないもの、一番ラクで簡単に続けられる方法は、歩き方を変えることです。日常生活のなかで誰もが必ず行うこと、誰もが毎日行うこと、それをしなければ生きていけないこと、それは歩行です。なので歩きながら姿勢を改善することができれば、意識して「頑張らなくても」姿勢と肩こりは治せるのです。

4.「肩ゆるスイッチ」は手首にあった!

たったの1秒で肩が凝らなくなる、「肩ゆるスイッチ」の入れ方をご紹介します。あまりにもカンタンな方法なので、「えっ!?」と聞き返されることも多いですが、肩ゆるスイッチを入れる方法は、手首の向きを3センチほど変えるだけです。もっと具体的には、手の甲を外側に向ける=手のひらを正面にする。肩こりを治すのに必要なことはたったひとつ、それだけです。この見たことも聞いたこともない不思議な歩き方のことを「こりとりウォーク」といいます。普段から手の甲を外側に向けて=手のひらを正面にして歩くだけで、内に巻いていた肩が自然に矯正されていき、内側に凹んでいた胸部が前方に突出し、同時に猫背もストレートネックも改善されます。

ここでそのメカニズムをより詳しく解説してみましょう。
構造力学から分析してみると、人間が歩くときには、手首に内向きのベクトルがかかります。なぜなら肘や手首など、肩の付け根から遠くにある場所ほど、4つの働き(遠心力・向心力・てこの原理・振り子の原理)によって、内側に回転していく作用が強まるからです。なので歩行のときには手首を外向きにして(=手のひらを正面にして)歩けば、内へ内へと回転してくる腕の動きが抑止され、それに伴って内に巻いてくる肩の動きもブロックされます。また歩きながら行うことで、手首から肘へ、肘から肩へと、逆行的な外巻き方向への連鎖が発生します。肩からの距離が離れた場所ほど、回転や「てこの作用」が強まることを逆手に取ることで、外へ外へと外向きに回転していく力を、下から(手首から)上に(肩関節に)作用させることが「こりとりウォーク」の狙いです。

5.肩こりが治らないもう1つの理由とは?

肩こりが治らない!姿勢が良くならない!その1つめの理由として、手の甲が内側に向いていることを指摘しました。
さらにもう1つ、多くの肩こりの原因になっているのが、背骨の問題です。
ここでは人を横からではなく、後ろから見ていますが、そのときに背骨が左右に歪んだり曲がったりしていると、そのカーブがきつくなっている部分の筋肉は、伸ばされたり(伸展)縮んだり(収縮)しています。

たとえば首が右に傾いている人は、カーブの出っ張り側である左の筋肉が常に引き伸ばされています。筋肉が伸ばされると、中にある血管も同様に引き伸ばされるので、血管の内径(中の太さ・内側の幅)が細く(狭く)なります。血管の内径が狭くなると、必然的に血流も悪くなりますので、気がつけばいつも左側に張りや痛みを感じます。
またそれとは反対に、カーブの引っ込み側である右の筋肉は、倒れてくる頭の重さによって圧縮(収縮)されています。筋肉が収縮することでも血流は悪くなりますので、日によっては右側の筋肉が重かったり、中が詰まっているようにも感じます。

この引っ込み側のように、筋肉が常に押し潰されて収縮している状態のことを「筋の潰され側」と呼んでいます。潰され側の筋は常に圧縮をされ続けた結果、少し縮んだサイズが「正常」になってしまうことがあります。 そうすると、何かの拍子に軽く引っ張られたり、ほんの少し伸ばされただけでも筋損傷が起きやすくなってしまうので、首であれば「むち打ち」や「ぎっくり首」のような激しい痛みが発生しやすくなりますし、肩や背中であれば「ピキーン!」と裂けるような、鋭い痛みも出やすくなります。

6.骨盤と背骨の深い関係

背骨をまっすぐにするのに、どうしても欠かせないのが骨盤です。
骨盤がズレて傾いていると、背骨のスタート地点であり土台でもある仙骨もそれに同調して傾いてしまうため、背骨が斜めにスタートしていきます。しかしそれでは上体が片方に倒れてしまうため、腰椎〜胸椎や、首を曲げることで何とか体幹を垂直に保ち、どちらか一方に倒れないようにしています。つまり首の傾きや背骨の曲がりは、骨盤の傾きによって作られているのです。これが身体の歪みの根本原因が骨盤にあるといわれる理由です。

そして骨盤が傾くと、どちらかの足が短かくなります。それって足の長さ自体が違うってことですか?いいえ、足の長さは変わりませんが、骨盤がズレていることで、足の長さが違って見えるのです。そのせいで、気がつけばいつも同じ側ばかりに体重を乗せてしまいます。つい体重を乗せたくなる側や、クツのカカトが多くすり減っている側、ズボンの裾が破れやすい側、横座りで足が出しにくい側、ふくらはぎの太い側などは、決まっていつも短い足側です。

骨盤は後ろに傾くと、足の付け根の位置もやや上へ移動するため、足が短くなります。逆に骨盤が前に傾くと、付け根の位置もやや下へ移動するため、足が長くなります。常に同じ側に体重を乗せていると、その重さで付け根の位置が上へ移動していくという考えもありますが、そもそも付け根の位置が上にあるから、つい体重を乗せたくなるという考えもあり、そのどちらも正解です。何らかの理由によって付け根の位置が上になっていると→そっち側に体重を乗せたくなる→ますます付け根の位置が上にいく→足の長さがさらに短くなる=地面に対して真っ直ぐに(垂直に)立てなくなる。これが背骨の歪みや曲がりがいつまでも改善できない、悪循環スパイラルの典型パターンです。

また骨盤のしくみがおもしろい点は、片方の骨盤が後ろに傾くと、もう片方の骨盤は前に傾きます。左右骨盤の歪み(ズレ方)は歩行と同じで、常に相互反対に作用しますから、片方が短くなる方向へズレれば、同時にもう片方は長くなる方向へズレます。

7.スマホはそんなに悪いですか?

健康系のテレビ番組などで、最近の若い男女はスマホを見すぎていて、肩が内巻きになっていたり、首の形が悪く(ストレートネックに)なってきている!と言われることも多くなってきました。 しかしスマホって、そんなに言われるほど悪いものなんでしょうか?

両手を使ってゲームやアプリなどに何時間も熱中しているのであれば、それはそれで猫背やストレートネックの原因にはなりますが、そんなに両手で持ってすることって多いでしょうか? またパソコンと違ってスマホであれば、横になってもできますし、それこそ天井を見ながらでもできるわけです。 片手で操作している分には姿勢をどうにでも変えられますから、そこまで骨格がフリーズするようなものではないかもしれませんよ。 むしろパソコンのほうが、同じ姿勢のまま長時間行うことが多いので、スマホ以上に背骨や骨盤の歪みを固着させる原因になります。

ちょっとスマホを悪者にしすぎているような風潮もありますが、でもよくよく考えると、スマホを見ている状態も、手帳を見ている状態も、マンガを読んでいる状態も、教科書を読んでいる状態でも、人体が於かれている状況にあまり大差はありません。 明治〜昭和でも学校では教科書を読んでいましたし、100年以上もデスクワークをしてきた日本人に、なぜこんなにも猫背やストレートネックが増えたのでしょうか? その答えは「骨盤」が知っています。つまり、猫背やストレートネックが増えている原因は「座り方」にあるということです。

昔の日本人は正座をしていましたから、現代人のように背中が丸まり、首の位置が前になってしまうことは、あまり多くありませんでした。 正座が猫背やストレートネックの予防になるのであれば、正座と同じ状態に骨盤を位置させることで、つまり骨盤を前傾に保ちながら椅子に座ることで、それらを未然に防ぐことも可能です。 猫背とストレートネックをダイレクトに解消できる効果的な座り方については、サンマーク出版より発売されている『肩こり、首痛、ねこ背が2週間で解消!「巻き肩」を治す』に詳しく解説がありますので、そちらをぜひご参照くださいませ。

8.ストレスと肩こりのメカニズム

原因の分からない痛みや症状で悩んでいる人が、いろいろな病院へ行き、さまざまな検査(レントゲン・MRI・エコー・CTなど)をしても、「あなたの体に物理的な異常はありません」と言われます。なぜどこも悪くないのに、激しい痛みや不調が現れるのでしょうか? 体は長期にわたって強いストレスを受け続けると、神経が異常なまでに過敏になり、痛みや不具合をより強く感じるようになります。 それでもしかし、いったいなぜそんなことが起きるのでしょうか?

それは猿人の頃からある、古いほうの記憶によるものです。まだ言葉もない、現在の動物達ともさほど変わらない生活だった頃の人間にとって、ストレスとなる対象は、ライオンや毒蛇など自分の生命を脅かす動物です。 それらが近づいてきた時に、敏感に察知・回避できるように、知覚神経(何かに触れた・痛いなど)を過敏に設定します。昔の人間にとってのストレスとは、精神的にどうのとか、将来の目標が見えず不安でウンヌンなどではなく、生命の危機が=ストレスです。 しかし現代の地球においては、他の動物に食べられてしまう恐怖や不安を感じることは、特殊な環境にいる人以外にはまずありません。

いま現在の我々にとって、ストレスの対象となるものは、同じ人間です。
現代人のストレスの対象は、人間だけといっても過言ではありません。
もの言わぬ家の壁に対して、強いストレスを感じることはありませんよね? 道端の電信柱に対して、「この電信柱に嫌われてしまったらどうしよう・・」と心配する人もいません。窓の外を飛んでいる昆虫や他の生き物からも、とくに気分が落ち込むような強いストレスを与えられることはありません。なので現代では、対人において強いストレスを感じたときに、昔でいうマンモスや虎などとの遭遇に似た生命の危機を感じます。

では現代人が生命の危機=対人ストレスを感じると、体ではどんなことが起きるのでしょうか?

まず自分の状況はいま、平穏・平常・平和ではないと脳が判断するため、ちょっとした外部からの刺激や攻撃にも気がつけるように、神経を過敏に設定します。 しかしその問題が思いのほか長期間続いてしまったり、強烈なものだったりすると、神経が異常なまでに過敏になり、本当は何も異常がないのに、体にはどこにも問題がないのに、激しい痛みや不調などを感じるようになってしまいます。

人間誰しもが生きている限りは、死の直前まで悩みや問題が尽きることはありません。厄介な悩みや争い事が引き金になる不調を、「問題の解決」のみで解消していこうとするのは、不可能に近いかもしれません。 なので「こりとりウォーク」などで少しでも身体を動かしながら、痛みや不具合を「感じにくい体質」に変えていくことが、ストレスによる不定愁訴(原因の分からない症状)で苦しむ人には、とても大切になります。

腰痛

1.腰痛の原因は前側にあった?

腰が痛い、腰が恐い、腰が、、と腰が痛いときに触れる場所は、当然ですが腰ですよね。誰もが体の後ろ側を、なでるようにさすります。でも、腰痛の原因は体の後ろ側ではなく、前側にあるといったら、どう思いますか?

「痛いのは腰なんだから、原因も腰にあるのは当然だろう!」

確かにそうです。その「痛み」が出ている場所は、確かに腰です。 しかしその「腰痛」の原因になっている場所は、腰ではなくてお腹のほうにあるといったら驚きますか? そうなんです。じつは慢性的な腰痛の原因はズバリ腰ではなくて、体の前側が黒幕になっていることも多々あるのです。

2.大腰筋こそが腰の要

体の前側にある「腰痛の黒幕」というのは、大腰筋(だいようきん)という筋肉になります。大腰筋は体の前側にあり、腰椎からスタートして、股関節の下(太ももの骨にある小転子という部分)につながっています。それが身体の前側で、腰の動きやバランスを支えています。上半身と下半身とを直接つないでいる唯一の筋肉なので、この筋力が低下すると、腰椎の支えが弱くなり、上半身が安定しなくなるため腰痛になります。

人間の大腰筋は長さも太さもそこそこあり、全身のなかでも大きいほうの筋肉に分類されています。大腰筋は焼き肉でいったら、いわゆるヒレ肉(フィレ、またはテンダーロイン)です。動物も人間とまったく同じで、1頭からたったの2本しか取れないので、当然ですが値段は一番高い肉になります。赤身たっぷり、脂肪が全然なく、とてもヘルシーで上品な筋肉です。ちなみにロースというのは、背骨の両脇にある筋肉のことで、人間でいったら脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)という、先にあった腰の「痛み」の場所にあたる筋肉です。なので腰が痛いということは、つまりロースが痛い!ということなんですよね。

人間の脊柱起立筋(ロース)は、とても細くて頼りない筋肉ですが、動物の脊柱起立筋はとても太くて、頼り甲斐のある魅力的な筋肉です。その違いを分かりやすく説明すれば、人間の脊柱起立筋というのは、板にのった「かまぼこ」をもうひと回りかふた回りほど小さくしたサイズが標準です。しかし例えば牛の脊柱起立筋は、皆さんがよく食べているステーキ肉のことで、あれが牛の脊柱起立筋を輪切りにした状態です。人間と比べて、どれだけ太いのかが分かりますよね。人間の15倍から20倍近くもあるのではないでしょうか。仮にですが、人間にもそれだけの太さの脊柱起立筋があったのであれば、たとえ前側にある大腰筋に多少の不具合があっても、腰痛になるようなことは、まずなかったかもしれません。

同じロースのなかでも、人間の腰にあたる部分には「サーロイン」という特別な呼び名があって、これは言わずと知れた、ロースのなかでもっとも最高級とされている筋肉です。なのでこれから腰が痛いときには、「あぁ、サーロインが痛い!」と言ってもよいかもしれません。腰痛にまつわる2つの主要筋肉が、大腰筋(テンダーロイン)と脊柱起立筋(サーロイン)というNo.1No.2の超高級部位というのも、なんだか不思議な感じがします。このように腰痛というものを、あまりに大変なもの、重篤なものとしてではなく、きわめて明るく捉えていくだけで、腰の痛みが半減する人が多いのも本当に不思議です。なので腰痛を忌み嫌うのではなく、友達のように接していくことも、腰痛のほうからお別れを告げさせるひとつの秘訣かもしれません。

3.腰痛は揉むとよけいに悪くなる?

腰を痛めると、どこへ行けばいいのか、迷いませんか?整形外科?でもぎっくり腰ではなさそうだし、痛いけど何とか仕事もできてるし、これは病院って感じじゃなさそうだな。じゃあ針とか?う〜ん、針は今まで1回も行ったことがないので、何だか不安だな。では接骨院?カイロプラクティック?いったい何を選択すればいいのか分からなくなって、じゃあマッサージでいいかな?と近所にあるマッサージ屋さんに行って、腰の筋肉をギュウギュウ揉んでもらう。

まず腰痛治療における一番の間違いは、腰を腰だけで治そうとすることです。腰の筋肉だけに集中して、30分とか60分とか時間をかけて一生懸命マッサージをしても、腰痛は治りません。むしろ同じ場所をくり返し揉みすぎてしまうと、かえって悪くしてしまう場合もあります。

なぜならその腰痛を引き起こした「原因」が腰ではなく、大腰筋やさらに他の場所にあるかもしれないからです。そうすると、間接的に痛みを出していただけの腰を集中して施術しても、あまりよくならないことが多いのです。むしろ、ほんの少しだけ血流を促してやればよかっただけの腰を、必要以上に押したり、揉んだりすることで筋組織が傷つき、「揉みかえし」のような痛みが出ることもあります。 原因のほうの施術は行わず、ただ現象として出ている腰だけを何回アプローチしても、原因のほうは明らかにそのままですから、高い確率でまた同じ場所に同じ痛みが現れるのです。

ではその気になる原因とは何か?ということですが、もちろんひとつだけではありません。これまで解説してきた大腰筋であることもあれば、お尻(大殿筋)やもも裏(ハムストリング筋)でもあったり、股関節やヒザや足首などの関節、さらにはヒップの横(中殿筋)の筋力低下や、太ももの前側(大腿四頭筋)の筋拘縮、背骨の歪みによる腰椎のカーブが原因であったりもします。なので腰痛は、原因の結果によって痛みが出ている腰ではなくて、そもそもの原因のほうに着目し、その原因のほうを改善させるという考え方をしなければ、なかなか解決に至らないのが現状なのです。

また腰は、あまりに怖がって、過保護に、あれもしないこれもしないと何でも行動を制限したり、大事大事にしすぎてしまうと、かえってなかなか症状を消したがらないという、ある意味あまのじゃく(偏屈)な特性を持っています。怖がって横になってばかりいても全然治りませんし、腰をかばって動かない生活をしすぎていると、かえってちょっとしたことにでも痛みを強く出したがる困った性質があるのです。

4.腰痛はいったい何種類ある?

腰には計5つの骨がありますが、腰痛は4番目と5番目の腰椎付近で起きることが多いです。ぎっくり腰などの、明らかな原因があるもの(重いものを持って腰で上げた・特定の動作で腰をひねったなど)は、1番や2番の後ろ側、いわゆる腰の背中側のほうでも起きますが、3ヶ月以上も続いて長期化している腰痛に関しては、圧倒的に下のほう=4番、5番、さらには仙骨という骨の両脇からお尻の上のほうに多く発生します。

腰痛のなかでも特に気をつけたいのは、神経がらみの症状です。特徴は、腰の一番下〜奥に感じる違和感や不安感で、そこに痛みが出ている場合には、前かがみでも後ろに反らせても症状が増します。さらに臀部から太ももの後ろや外側〜ふくらはぎの後ろや外側〜カカトの外側から足の甲や指先までが「ジンジン」「ビリビリ」とシビレていたり、シビレがなくても足の神経がつれるようなイタ苦しさやだるさを感じることがあります。また他にも、足に力が入りにくい、足を上げるのが重い、カクンとヒザの力が抜ける、足に冷たい感覚が走る、または熱い焼けるような感じがするなど、人によっていろいろな症状を訴えます。

このような症状の場合、単に腰椎の間(椎間板)が狭くなるような姿勢になっている場合と、じっさいに椎間板が薄くなってしまい、神経を圧迫しやすくなっているタイプに分けられます。しかし施術の考え方としては、どちらも腰椎の空間を拡げる姿勢を作っていくという点では、同じアプローチをします。このような神経がらみの腰痛では、してはいけない方向への動作・行動についての注意事項を、しっかりと守っていただくことが大切になります。

他にも、朝起きたときの動き始めに、強い痛みがある腰痛もあります。これは腰椎の後ろ側がくっつき過ぎて起きるタイプの腰痛で、一点局所の狭い範囲に鋭い痛みがあるのが特徴です。しかし痛みが激しいのは起きてから10〜20分程度なので、そのまま行動を続けていくうちに、だんだんとラクになります。また長時間座っていたり、しばらく動かないでいた状態からの動き始めで、朝と同じ場所に同じ痛みを感じますが、これもしばらくすると痛みは軽くなります。反り腰や太り気味の人に多い傾向があるので、腰椎の後ろが接近しないような姿勢作りや、腰が右や左に傾かない姿勢作りを心がけることで、回復することが多い腰痛です。


【足のシビレが伴っている腰痛の分類】

1)腰椎椎間板ヘルニア
・前かがみがもっとも危険
・後ろに反らしたり、右または左に倒したときなど、症状が増す方向には倒さない

2)坐骨神経痛
・ヘルニア同様に、倒して症状が増す方向には倒さない

3)腰椎椎間板症
・レントゲンだけでも確認可(腰椎の間が狭いことによる神経圧迫の疑い)
・ヘルニア同様に、倒して症状が増す方向には倒さない

4)腰部脊柱管狭窄症
・腰を反らせる動作は禁止
・ヘルニア同様に、倒して症状が増す方向には倒さない

5)腰の歪みによるもの
・激しい腰椎のカーブによる神経圧迫の疑い
・椎間板に問題がなくてもカーブが激しければシビレる
・側弯症もこれに含む
・ヘルニア同様に、倒して症状が増す方向には倒さない

6)変形性腰椎症
・レントゲンだけでも確認可(骨の変形や骨棘の有無を確認)
・ヘルニア同様に、倒して症状が増す方向には倒さない

<これらの対処法>
・特にアイシング(氷で冷やすこと)の必要はない
・温めてラクになるのであれば温める
・シップは気休め(ラクに感じるのであればシップでもよい)


【激しい腰痛】

1)ぎっくり腰
・筋肉自体には問題がないものもある(筋膜の亀裂による激痛)
・2〜3日安静にする

2)仙腸関節痛
・腰のかなり下〜お尻の両脇(中心寄り)の激痛
・仙腸関節の軽度離脱・剥離、関節周囲靭帯の損傷
・ごまかしごまかし生活する(長期療養の覚悟が必要)

3)腰椎椎間関節症
・第4〜5腰椎後部に多い局所の鋭い痛み
・反り腰による関節接近で起こるものが多い(関節包・靭帯の炎症)
・動かして痛い方向には動かさない
・動いているとラクになるものも多い(動き始めの数分だけ痛い)

<これらの対処法>
・(1)はアイシングする必要があります(逆に温めてはいけません)
・(2)(3)は痛みが激しければアイシングする
・シップは気休め(ラクに感じるのであればシップでもよい)


【鈍い重い腰痛】

1)肉離れ
・激しいスポーツによるものが多い(一撃系〜持続負荷系によるものに分かれる)

2)腰椎すべり症・分離症
・激しいスポーツによるもの、または反り腰によるものもある

3)筋疲労性腰痛
・老廃物の蓄積、長時間座位によるもの、運動不足、血流低下によるもの
・一般的にもっとも多い腰痛

4)骨粗鬆症による腰椎圧迫骨折など
・尻もちなどで多く起きる(自然に骨折している場合もある)
・過度の前傾姿勢による筋伸展が痛みの原因

<これらの対処法>
・(1)のみアイシングが必要
・(2)(3)は冷やす、温めるのどちらでもよい
・(4)はむしろ温めてもよい
・シップは気休め(ラクに感じるのであればシップでもよい)

5.椎間板ヘルニアは治りませんか?

椎間板は上から下への圧にはめっぽう強いですが、ねじりの動作には非常に弱いため、重いものを持って腰をねじることが多い仕事に就いている人は、椎間板ヘルニアになりやすいといえます。上からくり返しの圧迫があっても椎間板は破れにくいですが、上からの重みがある状態でねじる動作をすると、椎間板は破れやすいのです。なので、上下の圧迫によってだんだんと、後ろにヘルニアが出てくるタイプのものよりも、重いものを持ってねじる動作で出たヘルニアのほうが、何の前ぶれもなく、急に発生することが多いです。椎間板に裂け目ができてしまうと、そこから中身(髄核:ずいかく)が飛び出て、それが神経に触れることで腰の痛みや足のシビレを感じるようになります。

しかし椎間板ヘルニアには不思議な一面もあります。それは、腰痛の経験も自覚もまったくない、健康な方々を100人選んでMRI撮影をしたところ、なぜか画像には「椎間板ヘルニア」が写っていたという実例です。これは世界のあらゆる研究機関やカイロプラクティックの大学でも検証済みの実験報告で、健常者の腰部MRIを撮影してみたところ、まったく腰痛がないのにヘルニアがあったという人がたくさん確認されたのです。ということは?必ずしもヘルニア=症状・痛みではないということ?つまりヘルニアがあっても、痛みを感じない人がたくさんいるのです。健康で毎日元気に過ごしている人が、腰部のMRI撮影をすることなんか、まずありませんよね。腰が痛くなってから初めて行うものですから、そのときにヘルニアが出ていれば、「あなたは椎間板ヘルニアです」と診断されてしまうのです。しかしじっさいには、たとえヘルニアが出ていても、知らずに普通に暮らしている人も、たくさんいるということです。

また驚くことに、例えヘルニアが画像に写っていたとしても、そのヘルニアがじっさいに触れている神経と、患者が症状を訴えている神経の支配領域の場所が一致しなかったり?何とさらには!そもそも右と左が違っていたり!することもあるそうです。これはびっくりですよね。画像では右にヘルニアがあるのに、患者は左の腰痛と左足にシビレを訴えている!? どうやらヘルニア=症状といった一貫性はないことが分かったことも、近年の大きな大きな発見です。これはMRIが普及したことによって明らかになった、椎間板ヘルニアの真実です。またじっさいには、たくさんの費用と時間を費やしてせっかくオペをしても、症状がまったく変わらなかったという人も、現に昔からたくさんいたわけです。

じつは私の20年間の現場経験上では、逆のほうが多いです。つまり画像を確認しても何も異状はないのに、激しい腰痛を訴えているケースのほうが、現実にはよっぽど多いのです。 これは足のシビレに関しても同じことがいえます。シビレ=ヘルニアではないことが圧倒的に多いです。なので病院で「ヘルニア!」と言われても、あまり怖がらないことです。

仮にですが、たとえヘルニアが本当にあっても、それでも心配することはありません。 それには2つの理由があります。まずひとつは、突出していたヘルニア(髄核)は、時間の経過とともに自然に引っ込む。つまり、ごまかしごまかしでも普通に暮らしていれば、ヘルニアは椎間板の中に戻っていくという説が有力であること。 現在では多くの医師もその説に賛同しています。

そしてもうひとつは、突出しているヘルニアを、免疫細胞(マクロファージ)が「これは異物だ!」と判断して食べてくれるという説。 これに関しても、現在では多くの医師がその説に賛同しています。 ちょうど毛虫が葉っぱをムシャムシャと食べるように、マクロファージが飛び出ているヘルニアを食べてくれる。過去にMRI画像によってヘルニアが確認されたとしても、数年後にまた病院へ行って画像を撮ってみたら、あら不思議?そのまま何もせず放置していただけなのに?あんなにハッキリと飛び出していたヘルニアが、消えてなくなっていることも多いそうです。

あなたの周りを冷静に見てください。 過去にヘルニアと診断されて苦しんでいた友人知人が、一生ヘルニアで苦しんでいますか?一生ヘルニアのまま亡くなっていますか?どこかで治っていましたよね?手術なしでも。整体やカイロや針に行ってなくても。ヘルニアは自然に治癒することも多いですから、「自分はヘルニアで大変なことになってる!」「もう終わりだ!」などとは思わないことです。そのほうが椎間板ヘルニアは早く治ります。仮に5年後に画像を撮ってみて、まだあのときのヘルニアが突出していたとしても、やはり心配することはやめましょう。先にあった統計にもあったように、健常者でも撮影をしてみれば、ヘルニアが飛び出している例があるのと同じことですから、痛みやシビレの症状さえなくなっているのであれば、それはそれで気にすることはありません。

6.ぎっくり腰が何ヶ月も続くことはありますか?

ぎっくり腰は、前かがみで重いものを持ったり、急な動き(ねじる・つまずく・地面にあるものを拾う・くしゃみ・ダンス・ゴルフ・テニスなどあらゆる動作)によって引き起こされます。筋膜(筋肉の膜:鶏のササミの表面にある透明の膜と同じ)に傷がついて起きる痛みであったり、筋肉が肉離れのように分断されて起きている痛みなので、慢性的な腰痛よりも痛みが激しいのが特徴です。寝返りすらもできないほど生活に支障を与えますが、包丁で切った傷口が自然にくっつくのと同じように、時間が経てば傷は勝手に修復されます。

あくまでもその強烈な痛みは、一時的なものだと考えればよいものです。傷口さえ塞がれば痛みも感じなくなりますので、これは慢性的な腰痛とはまったく別物だと考えてください。ぎっくり腰に関しては、可能であれば直後に氷で冷やし、あとはごまかしごまかし、だましだまし、痛くないように生活していれば治ります。早い人では3〜4日、遅くとも2週間以内には、通常の生活が取り戻せるようになります。

「病院や治療院にはいつ行けば?」といった質問をよく受けますが、激しい痛みで歩くこともままならないような状態で、ムリをして病院まで行く必要はありません。そのムリな動きによって、ますます痛みが激しくなったり、痛みが消えにくくなるケースもありますので、心配な人はあるていど動けるようになってから、念のため受診してください。


【シップの誤解】

じつはシップには、腰痛の原因そのものを治す成分は入っていません。 冷シップはメントール、つまりハッカが入っているだけ。 温シップはカプサイシン=赤トウガラシが入っているだけ。 時々、シップさえ貼っていれば、その薬効成分が皮膚からジワジワとしみ込み、痛みの原因となっている部分が修復〜改善されると誤解している人もいます。残念ながら、シップには炎症物質を沈静化したり、損傷部分を修復するほどの効果は、ほぼないと思って間違いありません。
※アイシングであれば炎症物質は沈静化されます。

ぎっくり腰にシップを貼って、劇的に効いた!という経験のある人は?ほとんどいないのではないでしょうか。効いてるんだか、効いてないんだか、といった感想だと思います。慢性的な腰痛に関しても、毎日シップを貼っていたら腰痛が完治した!という話は聞いたことがありません。よく、ぎっくり腰などの急性腰痛には冷シップを、慢性化した腰痛には温シップを、などといいますが、そんなのどっちでやっても変わりません。どっちにしても効果はないのだから、やってもやらなくても大差はありません。 現に日本全国、どこの整形外科や接骨院でも、慢性腰痛にも冷シップを出してるじゃありませんか。つまりは提供側でさえも、そんなものはどっちでも変わらないと思っているのです。

シップは痛みの原因そのものが治っているのではなく、気を紛らせているだけです。つまり痛みから気をそらしているだけ。痛い痛いと感じて、痛みのボリュームレベルを過剰に上げている「脳」を、ひんやりとした冷たい感覚でごまかしているだけなのです。それでも一時的にでもラクになれれば、それはそれで良いとは思いますが、その痛みを引き起こしている原因のほう(筋肉の状態・骨格の歪みなど)は、明らかにそのままの状態ですから、遅かれ早かれ根本の原因を把握し、問題を解決することが何よりも大切です。

最後にもうひとつだけ、多くの人が間違ってやっていることがあるので、教えておきたいと思います。それは、シップを貼って寝ることです。これまでの解説でも分かるように、寝ながらシップを貼るなど、まったくもって意味がありません。起きているのであれば、脳をごまかすという意味では、貼ることにも多少の意味はあります。しかし寝ている状態では、ひんやり感も何も、貼っていることすら分からないので、本当に意味がありません。かえって貼ったせいで体温の発散ができずに熱を持ったり、貼っている部分が寝汗でかぶれたり、かゆみの原因にもなってしまいますので、寝ながらシップを貼るのはもう止めましょう。明らかに都市伝説的な、古い価値観の化石のような対処法なのです。

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